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コロナ禍で、私たちの生活スタイルは大きく変わりました。どの国でもマスクや消毒剤、体温計などの売り上げが爆発的に伸び、外出先ではマスク着用、家に帰ると手洗いや消毒をする習慣がアメリカでも定着しました。特に気にする人は、外出するたびにガレージで服を着替えて即シャワー、荷物も全て消毒するほどの徹底ぶりです。けれど、感染予防として政府や保健機関で奨励している予防対策と比べて、度を越して過剰な対応をしているようなら、強迫性障害(OCD:Obsessive–compulsive disorder)の疑いがあるかもしれません。 OCDとは、考えたくないのにある特定の考えが何度も頭に浮かんで来て、それを消し去ろうと何度も同じことを繰り返してしまう病気です。同じ考えを繰り返す「強迫観念」と、同じ行為を繰り返す「強迫行為」があり、自分でもおかしいと思いながらも、特定の考えや行為から抜け出せずに苦しみ、日常生活にも支障を来します。典型的なものでは、汚れが気になり何度洗ってもまだ汚れている気がする「不潔恐怖」、重い病気にかかってしまうかもしれないと異常に恐れる「疾病恐怖」、家のカギをかけたかコンロの火を消したか何度も確認してしまう「確認行為」、他人にケガをさせてしまうかもしれないと不安になる「加害恐怖」、順序通りにものを並べて片付けておかないと強い不安に襲われる「不完全恐怖」、不要なものを捨てられない「保存強迫」などです。また、家族に対しても過剰な手洗いや掃除を強制したり、外出を制限したりする場合も多く、これらは「巻き込み型」と呼ばれています。家族が協力すればするほど、本人の症状は逆に悪化していき、要求もエスカレートしていきます。 OCDは、人種や性別に関わりなく人口の約2〜3%が発症すると言われており、珍しい病気ではありません。多くは10代〜20代前半に発症します。小さな子どもの中にも、ミニカーを正確に並べたり、道路のタイルで特定の色を避けたりする子がいますが、次第になくなる場合がほとんどなので、あまり心配する必要はないでしょう。ちなみに、犬や猫などの動物にも、ストレスなどから強迫的に毛づくろいをしたり、繰り返し鳴いたり唸ったりするOCD的な行動が見られます。 本人も異常だとわかっていて止められないのが特徴で、コロナ禍になってからは、1日50回以上手洗いをする、車の窓を開けられない、感染が怖くて外出できないといった人もいます。また、新型コロナに関する悲観的なニュースばかりを追いかけて不安を募らせる人も。こうした行為は、「絶望(Doom)」と「画面のスクロール(Scrolling)」を組み合わせて「ドゥームスクローリング(Doomscrolling)」とも呼ばれています。米疫病対策センター(CDC)の調査によると、コロナ禍でうつや不安、薬物に苦しむアメリカ人が急増し、6月末には全体の40%に上るという結果も出ています。特に18〜24歳の若年層が影響を受けており、ドゥームスクローリングによってさらに不安やうつ傾向が増加していると考えられています。 OCDを発症しているのではないかと不安に感じる方、また、どこまでが適切な感染予防の行為かわからないという方もいるでしょう。対策としては、自治体や保健機関など信頼できる情報源のガイダンスに従い、過剰な手洗いや消毒を行わないようにすること。米疫病対策センターでは、外出後、咳やくしゃみ、鼻をかんだ後、調理前、食事前、顔を触る前などに、石けんで手を20秒洗うことを推奨しています。それ以上は過剰に手洗いをしないこと。また、不安をあおるニュース記事もできるだけ見ないようにして、1日10分程度に抑えるといいでしょう。基本は、強迫観念は避けようとせずに受け入れること、強迫行為は抵抗してその行為を減らしていくことです。自分で過剰だとわかっていても、繰り返し手を洗うのが止められないといった状態が続いているようなら、かかりつけ医や専門機関へ相談することをおすすめします。
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Author長野弘子 Archives
February 2024
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