www.soysource.net/2019/08/breakfast/
シアトルの短い夏、子どもたちは親の疲労を物ともせず、旅行にサマー・スクール、友だちとの外遊びなど、思いっきり楽しんでいることでしょう。でも、休みの間は生活リズムがどうしても乱れがち、という家庭も少なくないのでは? もしかしたら、朝食を食べる時間がない日もあるかもしれませんね。生活習慣と脳の発達は密接に結び付いており、特に朝食の有無は子どもの脳の発達と学力に大きな影響を及ぼすとされています。 文部科学省の調査によると、朝食を毎日食べている子どもは、食べていない子どもに比べ、全ての学年と教科で成績が高かったそうです。また、東北大学の調査によると、偏差値65以上の大学に入学した人の割合では、朝食を毎日食べる人と食べない人では何と10%近くの差があったとのこと。脳の神経細胞(ニューロン)はブドウ糖を栄養にしているので、良質の炭水化物をしっかり取っておかないと、脳が栄養不足になり、集中力や記憶力が大幅に低下します。 アメリカの調査でも同様の結果が出ており、朝食抜きのグループでは情報処理能力や空間認識能力の低下が見られました。さらに、朝食の種類と成績も関連しており、オートミールと市販のシリアルを食べさせた調査では、シリアルを食べた子どもは集中力が持続せず、オートミールを食べた子どもに比べてテスト結果が悪くなりました。油と砂糖がたっぷり入ったドーナツやマフィン、甘いシリアルなどは、食後の血糖値の上下が急激で集中力を低下させるので、避けたほうが良さそうです。さらに、朝食のおかずの数と頭の良さの関連性を調べた調査では、おかずの数が多いほど認知発達テストの指数が高く、主食だけではなく、さまざまな栄養を含んだバランスの良い食事により脳が発達するという結果が出ています。 家族で一緒に食事を取る子どもは、野菜や果物の摂取量が多く、肥満およびうつ症状が少ないことも知られています。いちばん大事なのは、一緒に食べる時間や回数よりも、食事の際の楽しい雰囲気。特に、中学生は親から繰り返し注意を受けると愛情を感じられずに精神状態が不安定になりがちです。食事中、親は聞き上手、褒め上手に徹して、子どもと一緒に楽しく食べることが大切です。 脳の司令塔とも言える前頭前野ぜんとうぜんやのニューロンの大きさが急激に発達するのは、11歳から18歳くらいまで。中学・高校の時期に質の高い朝食をしっかり食べて、午前中から集中できるかどうかが、前頭前野の持つ「実行機能」を鍛えるカギとなります。実行機能とは、目標に向かって自己をコントロールしながら計画的に課題を実行する能力のこと。集中力、注意の切り替え、自己抑制、目標設定、計画、段取り、実行、時間管理、感情抑制、柔軟性、作業記憶(作業が終わるまで一時的に情報を記憶する力)、メタ認知(物事を客観的に把握する力)などのさまざまな能力が含まれます。実行機能は、子どもが将来的に社会人として組織やコミュニティーの中で自立した人生を送るようになるためにも不可欠。これらの機能が未発達のままだと、能力があり努力はしていても長続きしなかったり、やるべきことはわかっているのにやらなかったり、何度注意されても同じ間違いを繰り返したりしてしまいます。ちなみに、ADHD(注意欠陥・多動性障害)の子どもは実行機能の中でも集中力、自己抑制、計画、作業記憶が約3割遅れていると言われています。ADHDの場合、たとえば7年生(12・13歳)で授業はよく理解できるけれど、授業中に友人にちょっかいを出したり、課題を頻繁に忘れたりするなら、これらの実行機能が3年生(8・9歳)の発達段階にあると考えると、より理解が深まります。 子どもの健全な脳の発達を促して実行機能を高めるためには、前頭前野のドーパミンを増やすこと。楽しいことを考える、運動をする、人と会話をする、料理をする、噛む回数を増やす、音読をするなど、さまざまな方法があります。この夏休み、ぜひ時間を作って、子どもと一緒に朝食を作り、楽しい会話をしながらよく噛んで一緒に食事する時間を増やしてみてくださいね。
0 Comments
Your comment will be posted after it is approved.
Leave a Reply. |
Author長野弘子 Archives
February 2024
Categories |