www.soysource.net/2018/05/teenagers-with-eating-disorders/
初夏のシアトル、薄着になる機会が増えてきましたね。子どもの二の腕やお腹のぜい肉が気になって、つい口に出したくなるときも。だけど、親や友だちから「ちょっと太った?」と言われたことがきっかけでダイエットを始め、気が付いた時には摂食障害(ED: Eating Disorder)になっていたというティーンエイジャーも多いので注意が必要です。 EDは、肥満恐怖や自尊心の欠如など主に心理的な要因によって引き起こされる食行動における障害で、ハーバード大学の摂食障害予防戦略チーム「STRIPED」によると、米人口の約4%がEDであり、約3,000万人が生涯でEDになると言われています。日本でも1970年代から増加し始め、現在では欧米諸国と同じ水準のED患者がいると推測されています。 EDは、拒食症(Anorexia Nervosa)、過食症(Bulimia Nervosa)、むちゃ食い障害 (Binge Eating Disorder)、特定不能のEDの4種類に大きく分けられます。拒食症には、極端な食事制限により急激に体重が減少する制限型、過食後に嘔吐や下剤、過度な運動を用いる排出型があり、肥満度指数(BMI)の17.5以下が診断基準となります。ひどくなると、女性の場合は月経が止まり、若年性更年期障害、低体温症、骨粗しょう症などを合併することも。さらに、過度の栄養不足から脳に萎縮が起こり、冷静に物事を考えることができず、強迫観念にとらわれ自傷行為を繰り返したり、家族に怒りを爆発させることで関係を悪化させてしまったりします。衝動的に自殺を試みるケースや、身体機能の著しい低下から死に至るケースもあり、精神疾患の中でもいちばん死亡率の高い障害だと言われています。 過食症も、拒食症と同じく、根底にある心理的な要因は同じだと考えられています。拒食症から始まって、体が慢性の飢餓状態になるとリバウンドで過食が止まらなくなるケースが60〜70%にも上り、食後は激しい自己嫌悪に陥って、嘔吐や下剤を乱用する危険な代償行為がやめられなくなります。排出するため必ずしも肥満にはならず、最近では過食と拒食を繰り返す混合型も増えています。 むちゃ食い障害は、過食症のように嘔吐や下剤を用いた排出を行わずに過食エピソードを繰り返す障害で、拒食症と過食症が圧倒的に10代の女性に多いのに対し、むちゃ食い障害は男性も含む20代以降の大人に多く、その3分の2以上が肥満状態であると言われています。 さて、EDになる原因ですが、やせている人が美しいという社会的風潮や、強いストレスなどの心理的な要因、また脳の機能異常といった生物学的な要因が複雑に関連していると考えられています。ED患者の一般的な性格の特徴としては、幼児期に自己承認欲求が満たされなかったり、いじめや性的被害に遭ったりして自己肯定感が低くなり、「今の自分じゃダメ」と、理想の自分を追い求める完璧主義的な性格が強いと言われています。人から賞賛されたいという思いが強く、普通の子が根を上げる過酷なダイエットにも挑戦。やがて体が飢餓状態に陥ると、脳内麻薬のβエンドルフィンが放出されて空腹感を感じなくなる「ダイエット・ハイ」状態になり、本人は全く病識がないままさらにのめり込んでいくパターンです。 最近のワシントン大学の調査によると、やせ願望は低年齢化しており、9〜 10歳の女の子の半数がダイエットを経験しているほど。しかし、育ち盛りの子どもの過度なダイエットはEDを発症する危険性だけではなく、知能指数の低下や合併症など心身共に深刻な障害を引き起こすリスクが高まります。早期発見・早期治療が重要ですので、もしお子さんが真面目な性格で、人間関係や学業などでストレスを感じており、食べ物のカロリーを気にして計算する、食事の量を減らす、食後に過度な運動をする、体重が急激に減ってきたなどの兆候がある場合は、すぐに専門機関に相談することをおすすめします。
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Author長野弘子 Archives
February 2024
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