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愛するわが子を虐待し、最悪の場合には死に至らしめる……。日本でも虐待死のニュースが絶えず報道されるようになっています。昨年3月に起こった東京都目黒区の5歳女児、そして今年1月の千葉県野田市に住む小学4年生女児の虐待死は、日本の社会に大きな衝撃を与えました。今年6月には児童虐待防止法および児童福祉法の改正法案が可決され、子どもへの体罰を禁止し、児童相談所の体制が強化される改正法が、来年4月にようやく施行されます。ただ、虐待死はその親だけの問題ではなく、深刻な社会問題として捉えるべきでしょう。親がここまで追い詰められた背景、学校や周辺住民の不適切な対応、支援体制の不備など、さまざまな要因が複雑に絡み合って起きるものだからです。 児童虐待には、大きく分けて身体的虐待、性的虐待、心理的虐待、ネグレクトの4種類があります。身体的虐待には、殴る、蹴る、激しく揺さぶる、息を塞ぐ、やけどを負わせる、拘束する、包丁や銃で脅すなどの行為が含まれます。しつけ目的でお尻を軽く叩くなどの行為は、ワシントン州でも違法ではありませんが、頻繁に叩くなど、子どもが怯える場合は虐待とみなされます。多くの調査で、体罰は子どもの自尊心を傷付け、親子間の信頼関係を損ねるので百害あって一利なしという結果が出ています。体罰の代わりに、タイムアウトを活用しましょう。これは、問題行動があるたびに、その場から離れた場所にひとりで一定時間座らせ、落ち着かせるという、アメリカでは一般的なしつけの手法です。 性的虐待には、性器を見せる、触る、触らせることや、強姦、性的暴行といった性的搾取行為はもちろんのこと、アダルトビデオの映像を子どもの前で観るなどの性的な刺激を与える行為も含まれます。子どもの脳は善悪を判断する機能がまだ発達していません。観たり聞いたりしたことを遊び半分で行い、児童相談所に通報されるケースもあるので配慮が必要です。また、性的虐待を受けた子どもは深刻な精神障害を抱える確率が高くなります。加害者のほとんどは家族や知り合いであるため、子どもが親戚やコーチなど特定の人物を避けたがる場合、まずは何が起こっているのか優しく話を聞く姿勢が大切です。 心理的虐待には、暴言を吐く、無視する、脅迫や恫喝をする、差別的な対応をする、さらに、片方の親の極端な悪口を言うなどの行為も当てはまります。直接的に子どもが暴力を受けていない場合でも、目の前で配偶者を怒鳴ったり暴力を振るったりすると、子どもは強い不安感を感じて心身に不調をきたす恐れがあります。これは面前DV(ドメスティック・バイオレンス)と呼ばれ、心理的虐待に含まれます。警察庁の調べによると、日本では面前DVの通報が毎年増え続け、昨年には6年前の約7倍にまで増加。面前DVも虐待であると認識されたことで、通報が増えたと考えられます。 ネグレクトは、食事や衣服を与えない、長時間放っておくなどの育児放棄や監護放棄であり、件数的にはいちばん多い虐待です。私が働くクリニックでも、DVにより心身に不調をきたし育児ができない状態の母親が何人も来ています。悲しいことですが、DV被害者であっても、ネグレクトとして通報する場合も。そこには、DV被害者が子どもを虐待し、その子どもが大人になってDV加害者になり、配偶者や子どもに暴力をふるうという負の連鎖が見えてきます。 DVと虐待、支配と被支配という負の連鎖を断ち切るためには、自分や配偶者の言動が少しでも虐待に当たると感じたら、まずはやめようと決心することです。子どもや配偶者へのイライラが募る場合、怒りは期待の裏返し、つまりは支配欲だと認識し、相手への期待値を低くすること。どうしても抜け出せないと感じたら、友人や家族、学校、専門機関に相談してください。子どもには、目上の人の言動を全て鵜呑みにせず、少しでも疑問や不安を感じたら信頼できる大人に相談するよう教えましょう。虐待で苦しむ子どもをひとりでもなくすためには、虐待に関する知識を共有し、地域全体で子どもを守るという認識を強めることが大切です。
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Author長野弘子 Archives
February 2024
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