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遠隔学習が定着する中で、オンラインでの授業を集中して聞くことが苦手で宿題も遅れがちになっている子どもが大勢います。わかっていても食生活や生活習慣を変えられない、締め切りギリギリまで仕事を始めないなど、大人でもやりたくないことは先送りにしがちです。こうしたやるべきことを先送りしにしたり、問題から目を背けて目先の物事に没頭してしまったりすることを「回避行動」と言います。回避行動を続けていくと気付かないうちに未解決の問題が増えていき、さらに回避するという悪循環のパターンに陥ってしまいます。子どもがこうした問題回避の思考パターンを身に付けないようにするには、どう接すれば良いのでしょうか。 回避行動には、5つの種類があります。1つ目の「状況回避」は、居心地の悪い状況を避けること。大勢の人が集まる場所を避ける、嫌いな先生やクラスメートがいる授業を休むなどが挙げられます。2つ目の「認知的回避」は、繰り返し浮かんでくる嫌な考えや記憶から逃れるため、自分に忘れるよう言い聞かせたり、ほかのことを考えて気をそらしたり空想したりすることです。3つ目の「防衛的回避」は、恐怖心から脅迫的に同じ行動を繰り返し、問題に正面から向き合うことを無意識に回避することです。前回の記事で紹介した手洗いなど度を超して繰り返す強迫性障害も、防衛的回避に当てはまります。4つ目の「身体的回避」とは、嫌な気持ちを感じるのを避け続けた結果、そのストレスが動悸や目まい、頭痛、腹痛、慢性的な疲労感などの身体的な症状となって現れることです。5つ目の「代替的回避」は、悲しみや恐れなどの否定的な気持ちを感じないように感情をまひさせたり、ほかのもので代替したりすることです。典型的な代替物や代替行為として、食べ物、お酒、薬物、買い物、ギャンブル、仕事、恋愛などが挙げられます。また、死別や事故などによる強い悲しみや悔しさに向き合うのを避け続けると、怒りが代替的な感情としてこみ上げてきて、ささいなことで怒鳴り散らしてしまう場合も。 回避行動は、人が成長していく発達過程でそれぞれ取り組むべき問題から目を逸らし、その解決を先送りにする行為とも言えます。大人になると責任も増えるだけではなく複雑になります。先送りにすればするほど問題は雪だるま式に膨れ上がり、そこから一時的に楽になるため薬物などに依存する危険性も高くなります。特に、薬物依存は依存が始まった年齢で精神的な成長が止まってしまうと言われており、インディアナ大学で心理学と脳科学を教えるリチャード・ローズ名誉教授の研究によると、成人前にお酒や薬物を乱用した人は精神的な成熟を果たせず、社会に出てからの失業率や犯罪率が高くなり、不安定な生活を送るリスクが高まるという結果が出ています。トラウマを抱えて苦しむPTSDもまた、発症する原因のひとつに、トラウマに関する記憶や感情を避けて考えないようにすることが挙げられます。苦しい気持ちを避けるのは一時的な解決法であり、避け続けると逆にパニック発作、極度の不安、解離症状などが悪化します。 それでは、子どもが嫌な気持ちや自分の課題に対して避けることなく正面から向き合える成熟した大人になるために、親はどのように導いてあげれば良いのでしょうか。 まずは、子どもが難しい課題に直面したり、嫌な気持ちを感じたりした時、それを受け止めてあげることです。「どうしてやってないの?」と非難する代わりに、「頑張ってやろうとしたんだね」など共感的な言葉がけをするだけで、自然と嫌な気持ちが消えて、自ら問題に取り組む姿勢が生まれてきます。子どもがひとりで解決できない場合は、手を差し伸べることも必要です。たとえば、宿題やお手伝いなどの課題ができない場合、つまずいている点を探し解決策を一緒に考えてあげることで、子どもの問題解決能力が育っていきます。 こうして課題をやり遂げるたびに経験と知識が増えていき、自分はできるという自己効力感が育っていきます。子どもに根気強く課題に取り組むスキルを教えて、これから直面する多くの困難を乗り越えていけるような精神的に成熟した大人へと成長して欲しいものですね。
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Author長野弘子 Archives
February 2024
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