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境界性パーソナリティー障害~いじめや虐待の影に見え隠れする病~

2/11/2019

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www.soysource.net/2019/02/borderline-personality-disorder/


ここ数年、日本でも虐待により命を落とす子どもたちの痛ましいニュースが増えていますが、アメリカでは先進国の中でも虐待死の数が群を抜いて高く、米保健福祉省(DHHS)が発表した2016年の調査では年間推定1,750人。毎日5人近くの子どもが虐待で命を落としている計算になります。ユニセフの調査では、アメリカでは2010年に330万人の子どもの虐待報告があり、10秒に1人が虐待またはレイプ被害に遭っているとのこと。私の働いているクリニックにも、虐待を受け傷付いた子どもが多く訪れます。


継父から性的虐待や肉体的暴力を受けたり、DV(ドメスティック・バイオレンス)被害者である母親がドラッグに溺れて育児放棄したりと内容はさまざまですが、虐待が長期間にわたるほど、そして幼少期から始まるほど、そのダメージは深刻なものになります。また、親への怒りを学校で発散させ、いじめっ子になったり、逆にいじめられても人間不信で誰にも相談できなかったりする子どもたちもいます。


DVの加害者や被害者の多くもまた、幼少期に親から虐待を受けていたというケースが多く、こうした虐待の影に、境界性パーソナリティー障害(BPD)が潜んでいる場合もあります。パーソナリティーとはその人固有の思考・行動パターンであり、それが一般的な思考・行動パターンの枠から著しく逸脱して社会生活に困難をきたしている状態が診断基準になります。

BPD患者の特徴は、自己像が不安定で常に空虚感を感じ、見捨てられることを極端に恐れ、感情の制御ができずに怒りを爆発させ、家族などの周囲の人たちを振り回します。また、それが自己に向けられたときには自傷行為や自殺につながります。DHHSの調べによると2014年のBPD患者の自殺率は8~10%と極めて高く、一般人口の自殺率の50倍に上ります。アメリカでは人口の1.6%に当たる約400万人がBPD患者とされ、20~30代の女性に多いのですが、実際には男性の患者も多く存在するとされています。


境界性という名前は、統合失調症などの重い精神疾患と不安障害などの比較的軽い精神疾患の間にあるという意味で付けられましたが、この「境界」という言葉はBPDを理解するのに不可欠です。自分が誰なのかわからないため、他者による絶え間ない承認がないと不安でたまらず、自他の境界線を引くことができずに相手に依存してしまいます。また、極端な二極思考を持ち、相手を理想化して期待を高め、相手が自分の思った通りに行動しないと全否定して攻撃します(脱価値化)。こうした心の動きは「分裂」と呼ばれ、防衛機能のひとつとして幼い子どもによく見られます。


精神分析家のメラニー・クラインは、幼児期までの子どもは「良い母」と「悪い母」を別人のふたりとして捉えており、母との安定したかかわりにより双方を統合して同一人物であることを受け入れるとしています。BPD患者の多くは、成長の過程で安心感と信頼を得られず統合がなされないまま成長し、二極思考から抜け出すことができません。そして、理想化した相手には、自分がどんなに傷つけられても見捨てられないよう必死でしがみつき、脱価値化した相手はこき下ろし追い詰めます。衝動的な行動に出たあとは深い自己嫌悪に陥り、うつ状態や希死念慮(死にたい気持ち)に苦しめられます。最初はうつや不安症状でクリニックを訪れ、治療を進めるうちにBPDが判明するケースも多々あります。


BPDの発症には遺伝的な要因と環境的な要因が複雑に絡み合っており、一親等がBPDである場合は発症率が通常より5倍高く、BPD患者の9割以上には何らかの虐待体験があるとのこと。BPD患者への効果的な治療法としては、ワシントン大学の心理学者であるマーシャ・リネハン氏が開発した弁証法的行動療法(DBT)が挙げられます。DBTは認知行動療法の一種であり、BPDの治療に特化したもの。マインドフルネス、対人関係、感情抑制、ストレス管理などのスキルを学ぶグループ療法、個人療法を組み合わせ、高い効果を上げています。悩んでいるようならぜひ1度専門家に相談してみたほうが良いでしょう。

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    Author

    長野弘子
    ​MA, MHP, LMHC


    NYと東京で出版事業に携わった後、東北大震災をきっかけにシアトルに移住。ノースウェスト大学院カウンセリング心理学卒業後、米大手メンタルヘルス機関で心理カウンセラー(LMHCA)として勤務。うつ病や不安障害、ADHD、自閉症等を抱える多くの子供やティーンエイジャーに対してセラピーを行っている。

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