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2020年4月、福岡県で当時5歳の男の子が餓死した事件で、今年の3月に母親とママ友だった女が保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕されました。元ママ友は言葉巧みに母親をだまして総額1,000万円以上を奪い取り、母子は食べ物もろくに与えられないまま子どもは痩せ細って死に至ったとのことです。この事件の詳細が明るみになり、多くの人が衝撃を受けました。夫と3人の息子と共に新築マイホームで幸せに暮らしていた彼女が、なぜひとりのママ友との出会いにより人生が急変し、全てを失うという事態に至ったのでしょうか。ママ友という独特の世界の中で浮かび上がってきた心理操作の手口とその予防策について考えてみました。 2016年4月、母親は子どもの通う公立の幼稚園で加害者の元ママ友と出会いました。彼女は「ほかのママ友があなたの悪口を言っている」とうそをついて母親の不安感をあおります。相手を不安にさせて判断力を奪うのは、心理操作の常とう手段。ママ友付き合いは子どもが絡んでおり関係を切るわけにもいかず、何とか周りとうまくやらなくてはいけないと母親は悩みます。その不安感につけ込み、「私は味方」とばかりに依存させ、母親の人間関係をひとつずつ断ち切りました。さらに「あなたの夫は浮気をしている」と吹き込まれた母親は2019年5月に夫と離婚。親族やほかの人間関係も全て遮断して環境をコントロールすることで母親は孤立し、真実を知ることができない状態に。 完全に孤立させると、いよいよ恐怖による支配が始まります。「自分の背後には暴力団とのつながりがあるボスがいる」と脅して、通帳や生活費を取り上げて経済力を奪いました。母親は極度の貧困と食事制限で正常な判断力を失い、生活の全てが「ボス」のグループに12台の監視カメラで把握されていると信じ込み、恐怖のどん底で加害者の言いなりになってしまいます。 ここで使われた心理操作の手口は、不安をあおり依存させ、周囲の人間関係を遮断して孤立させたあと、恐怖で相手の心を支配するというもの。ドメスティック・バイオレンス(DV)とも酷似しており、いったん支配・被支配の関係が築かれてしまうと、抜け出すのが極めて困難になります。これほどまでに極端なケースはまれですが、ママ友付き合いは子どもを介した狭い世界になりがち。子どものためにと相手に合わせたり、リーダー格のママの機嫌を損ねないように気をつかったり苦労も多く、関係がこじれると日々の生活が本当に辛いものになります。 それでは、ママ友と程良い距離感で良好な関係を保ちながら付き合うには、また、他人につけ込まれないためにはどうすればいいのでしょうか。まずは、人間は誰でもある一定の条件下に置かれると心理操作されてしまう事実を知っておくこと。「私は猜疑心が強いので絶対にだまされない」と自信たっぷりな人もいるかもしれませんが、実はそういう人こそだまされやすいのです。「絶対」という強い感情を持っている人ほど反応しやすく、不安をあおられた時に感情が先走ります。お人好しと言われてしまう真面目で誠実な性格の人も要注意。一度決めたら翻すのは良くないと考えるので、怪しい部分があっても無視して都合良く解釈する傾向にあります。また、自分で物事が決められず、必要以上に相手に合わせるタイプの人も他人に利用されやすくなります。 子どもを比較してマウントを取られたり、無理なお願いをされたりすることが多いと感じたら、思い切ってママ友と距離を取るのも手です。心理操作されないためには、そういう人と最初から関わらないこと。ですが、ある程度の関係を持ってしまうと、いきなり切るのは難しいかもしれません。会話の内容や量を自分で調整し、「孤立するのが怖い」など自分の不安な気持ちや依存心をそのまま認めてあげることが、他人に操作されないための第一歩です。そして、不安や恐れがベースになっている関係であれば徐々に関わりを減らし、安心して自分のままでいられる人との付き合いを大事にすることで、自然と価値観を共有できる人との付き合いが増えていきます。 子どもは親の背中を見て育つもの。自由に自分らしく生きている親を見て、子どももまた精神的に自立して他人に惑わされにくい大人へと育っていくことでしょう。
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Author長野弘子 Archives
February 2024
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