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子どもが思春期に突入すると、会話の内容がグンと大人びて、できることも増える反面、感情的になって相手を攻撃したり危険なことに手を出したりと、その急激な変化に親はとまどうばかり。けれども、こうした理解に苦しむティーンの行動は、脳の発達段階を理解すれば納得できます。今回は、思春期の脳はどうなっているのかを探ってみましょう。 一般的に、ヒトの脳は3歳までに大人の脳の80%、6歳までに90%の大きさに成長します。ただし、それはあくまで大きさであり、合理的に物事を判断できるようになるのは、脳の司令塔である「前頭前野」が十分に成熟する25歳前後だと言われます。 前頭前野は、やる気や意欲を自分の夢または目標として設定し、計画的な実行、物事の客観的判断、問題解決などをできるようにします。また、相手の気持ちに共感したり、自分の感情を抑えて適切な行動をしたり、生きて行くうえで不可欠な「社会性」をつかさどる部位でもあります。 その一方で、前頭前野より早い段階で形成されるのが、感情の中枢である「扁桃体」です。五感や思考などの刺激に反応し、「快」か「不快」か、「好き」か「嫌い」かを瞬時に判断して、すぐさま身体にシグナルを送ります。このシグナルにより、心臓の鼓動が速くなったり筋肉が緊張したりと、自律神経のさまざまな反応が起こるのです。扁桃体の反応を適度に抑えるのも前頭前野の果たす役割なのですが、思春期の子どもは前頭前野が未発達のため、理性よりも感情に素早く反応してしまい、恐怖や不安でパニックになりがち。こうした状態は「扁桃体のハイジャック」とも呼ばれ、冷静に物事を対処できずにトラブルになりやすい状況を作ってしまいます。 思春期はまた、受け入れて欲しい対象が、親から友人・恋人などに変わる時期です。しかし、理性の前頭前野と感情の扁桃体がうまく接続できていないので、相手の表情を誤解して受け取ることが多く、不安や孤独、怒り、失望を感じやすくなります。他人からの影響が大きく、感情の切り替えも苦手なため、衝動的な行動に出るリスクが大人より高いのです。 扁桃体と同じく前頭前野より早く形成される脳の部位が、「報酬」をつかさどる「側坐核(そくざかく)」です。思春期の子どもはリスクを考えるより先に報酬を求めて動きます。大人よりもお酒やドラッグ、性的な欲求に弱いのは、報酬を求める脳をストップさせる機能が未発達のため。まさに、思春期の脳はブレーキのないアクセル全開の車のようなものですね。 反抗期で親の言うことを聞かないティーンが薬物などに手を出した場合、さらに脳の発達に悪影響が及ぶことに。それでは、親はどうしたらいいのでしょうか? (1)気持ちを落ち着ける方法を教える 深呼吸をする、水を飲む、その場を立ち去る、お気に入りの場所をイメージする、音楽を聴くなど、有効な方法をリストアップしてみると良いでしょう。 (2)曖昧な表現を避けて誤解を減らす 自分の気持ちを明確に伝えると同時に、相手の気持ちもくみ取り、共感性を高める対話を増やせるようにしましょう。 (3)失敗は成長の糧 失敗してもやり直しはいくらでも利くことを教え、やりたいことにチャレンジさせてあげましょう。 (4)合理的思考を取り入れる 行動を起こす前にリスクとベネフィットを考えて書き出すなど、正しい判断が下せるような方法を教えましょう。 (5)良好な親子関係を築く 困ったことがあったら、どんなに小さなことでも親に相談するように繰り返し伝えましょう。親子の絆を強めることが子どもを守るいちばんの方法です。 皮肉なことに、前頭前野は脳で最も遅く成熟し、早く老化が起こる部位。大人へと急成長を遂げている思春期の前頭前野はまだまだ発達段階であるのに対し、更年期に差しかかった親の前頭前野はすでに萎縮が始まっています。最近では、デジタル機器を多用すると、20代から機能低下が起こることがわかってきました。この脳の司令塔を健やかに成長させ、いかに日々意識して維持するかが、親子共に充実した人生を送るカギになると言えそうですね。 (参考記事) (1)https://www.medicalnewstoday.com/articles/319185 (2)https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3621648/
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Author長野弘子 Archives
February 2024
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