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新型コロナウイルスの感染拡大がもたらした二次的な影響はさまざまな分野に広がっていますが、そのうちのひとつが性をめぐる問題です。日本では、休校や自粛要請などで居場所や収入を失う若者が増え、望まない妊娠をするティーンが急増しています。途上国ではより深刻で、国連人口基金(UNFPA)の調査によると、新型コロナによる経済的な困窮から18歳未満で結婚をする「児童婚」が今後10年で1,300万件も増加し、ロックダウンが6カ月におよぶ場合は4,700万人もの女性が避妊具や薬を入手できず、望まない妊娠は700万件増、女性への暴力が3,100万件増という衝撃的な予測もなされています。 子どもの性を狙う犯罪に巻き込まれないようにするには、親はどのように子どもと向き合えばいいのでしょうか。性教育とは、単に性行為や性感染症、避妊の方法を教えるだけではありません。家庭や社会での男女平等、性の多様性、商品化された性についてもオープンに話し合い、命の大切さや人間としての尊厳を子どもが培っていくための命の教育とも言えます。実際に各国の研究で、性教育により相手を思いやる慎重な態度が育まれ、性交年齢も遅くなるという結果が出ています。 ネットやメディアで性情報が氾濫する現在、性教育は思春期になって始めるのでは遅過ぎます。国連による「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」では性教育は5歳から推奨され、フランスやスイスなどでは何と3歳からスタート。年齢に合わせた内容で、まずは自分の体を大切にすることから教えます。たとえば、男女の体の作りは違っていること、違っていても平等であること、ほかの人が見たり触ったりするのを拒んでいいこと、触られて嫌なときは大きな声で「ノー」と言うこと、大事な部分を触られた場合は信頼できる大人に言うことなどを教えます。また、トイレに行く際には「プライベートタイムは邪魔しないでね」と伝え、自分の体だけではなく、ほかの人の体も大切にすることを伝えましょう。 5歳頃には「わたし/ぼくはどこから来たの?」と疑問を持つ子どももいます。植物は種から芽が出て、動物はお母さんのおなかの中で赤ちゃんが育ち、全ての命は生まれてくるものだと教えましょう。国連のガイダンスによると、5〜8歳で赤ちゃんが生まれる過程と、こうした行為は自然で健康的なものであることを教えます。また、オンラインで裸の写真を見たときなどには「これは大人向けで、子どものためではないんだよ」と教えましょう。異性を好きになる人もいれば同性を好きになる人もいて、いろんな形の家族があっていいなどと寛容性について話し合うことも大切です。 ガイダンスでは9〜12歳に、性行動、妊娠や出産の知識、性感染症、避妊器具の使用法などを教えます。思春期に入るこの時期に日米の学校で性教育の授業をしますが、家庭でも「相手を思いやる心がいちばん大事」、「性的な行為にはお互いの同意が必要」と繰り返し話すことが重要です。裸や下着姿の写真を送るように迫られたり(セクスティング)、同意のないまま体を触られたり、デートレイプの被害者になるのもこの頃から急増します。 アメリカでは12歳以上で毎年45万人近くが強姦や性的暴行の被害に遭っており、その9割近くが女性です。ミソジニー(女性蔑視)を助長しかねない暴力的なポルノや商品化された性が社会にあふれ、被害者の多くはこうした価値観を無意識に心の中に取り込み、自分を責め、誰にも言えずに苦しみます。ハリウッドの元大物プロデューサーであるハーヴェイ・ワインスタイン被告による性的暴行から#MeToo運動が沸き起こったのはほんの2年半前。日本でも性被害者が警察に通報するのはわずか4%と言われており、表面に現れる事件はまだまだ氷山の一角だと思っていいでしょう。 男女問わず「あなたは大切な存在だよ」と繰り返し子どもに伝え、自己肯定感が高まれば、「自分の体もほかの人の体も大事」と自然に思えるものです。性という漢字は「心が生きる」と書きます。自分が次の世代に命をつないでいくためのかけがえのない存在だと、子ども自身が感じられるようにしっかりと伝えていきましょう。
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Author長野弘子 Archives
February 2024
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