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朝起きるとすぐにスマホをチェック、食事もTikTokやSnapchatなどのSNSを見ながらで、親子の会話はゼロ。そんな子どもに親はイライラを募らせ、親子げんかが絶えないといった相談が増えています。親として、どう対応すれば良いのか、本当に悩みますね。 若者のメンタルが悪化する原因のひとつとしてSNSの使用が取り沙汰されてきましたが、今年2月にCDC(米疾病対策センター)から発表された調査結果によると、2021年にアメリカの女子高生の約3人に1人が自殺を真剣に考えたことがあるそう。さらに、女子高生の57%が慢性的に「悲しい」または「絶望的」と感じており、これは過去10年間で最悪の数字です。自殺を真剣に考えたことがある男子高生も、女子よりは少ないものの、2011年の13%から14%に増加しています。 若者のメンタル悪化とSNS普及率には相関性が見られ、コロナ禍前から規制を呼びかける声が強まっていました。今年5月には、アメリカ心理学会によりSNSに関する初の健康勧告も。利用時間を減らすこと、14歳までは子どものプライバシーは尊重しつつも自傷行為や自殺などの内容がないか親がチェックすることなどを推奨しています。また、SNSをやめたいのにやめられない、嘘をついてまで使い続ける場合は要注意と、警鐘を鳴らしました。 SNSの多くは、ギャンブル業界で広く使われている中毒性を高めるための行動心理学の手法を用いています。有名なのが、インスタグラムも取り入れている「可変報酬」です。これは、投稿に付く「いいね!」の数を留保しておき、予想よりも少ない「いいね!」の数にがっかりさせた後、一気に表示するというもの。快楽物質であるドーパミンが脳に大量分泌され、依存性が強まるのです。ほかにも、完成したものよりも、未完成のもののほうが記憶に残りやすくなる「ツァイガルニク効果」、報酬や反応をいつ得られるかわからない状況下では価値をより高く感じる脳の仕組み「不定期強化」などを利用して、ユーザーを長時間SNSに滞在させるよう仕向けています。 ターゲット広告や中毒性のあるアルゴリズムの存在を理解している大人でさえも、なかなかSNSをやめられないのですから、脳が未発達な子どもに「やめなさい」と言っても効果がないのは当然です。それではどうすれば良いのでしょうか? まず、SNSを利用することでなぜメンタルが悪化するのかを理解すること。原因のひとつとして、FOMO(Fear of Missing Out)と呼ばれる「取り残されること、大事なものを見逃すことへの恐れ」があります。 次々と表示される友人たちの旅行や外食の写真、楽しそうなフィードを見ていると、他人の人生が自分よりも充実して素敵なものに思えてきます。さらに自分が誘われていないグループ写真などを見ると、自分だけ取り残された気分に。そして、自分を認めて欲しいという承認欲求を満たすことを目的にSNSを続ければ続けるほど、比較競争の罠わ なにはまって抜け出せなくなるのです。 その一方で、FOMOをほとんど感じない人もいます。そうした人の特徴として挙げられるのが、前回記事で「子どものやる気を引き出す方法」として取り上げた3つの心の欲求「自律性・有能感・関係性」が満たされていること。つまり、自分のやりたいことを自分で決めて実行する、自分の力で物事をやり遂げる、そして自分は他人から価値を認められて尊敬されていると思う人は、SNSによりメンタルが悪化することはあまりありません。 SNS依存気味の子どもは、ただでさえ心の欲求が満たされていないので、頭ごなしに否定したりSNSを一方的に制限したりするのは逆効果になるでしょう。前回記事の心の欲求を満たすための子育て法を試すなどして、子どもがなぜSNSをやりたいのかという気持ちを聞いてあげてください。子どもの自律性・有能感・関係性への欲求を満たす対話を根気強く続けることは、SNS依存の予防だけではなく、子どもが将来充実した人生を送るための近道でもあるかもしれませんね。 参考:(1)Nearly a third of teen girls say they have seriously considered suicide, CDC survey shows https://www.cbsnews.com/news/teen-girls-suicide-depression-mental-health-cdc-survey/ (3)Motivational, emotional, and behavioral correlates of fear of missing out https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0747563213000800?via%3Dihub (2)Dopamine, Smartphones & You: A battle for your time https://sitn.hms.harvard.edu/flash/2018/dopamine-smartphones-battle-time/
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Author長野弘子 Archives
February 2024
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