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​healing within self

知らないうちに別の自分が現れる?~解離症状と忘れられたトラウマの記憶~

8/20/2021

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https://soysource.net/lifestyle/children_teen_kokoro/traumas/

車の運転中にどうやって家にたどり着いたか覚えていない、読書や音楽に没頭して自分が呼ばれていることに気付かない、そんな経験はありませんか? このように自分の意識や感覚が自己から切り離されることを「解離」と呼び、誰もが日常的に経験しています。ただ、幼少期に受けた虐待や事故など耐え難いトラウマを経験した人が、自分の心を守るために頻繁に解離を起こしてしまう場合もあります。自分の体が自分のものじゃない感覚や、自分がふたりいるような感じ、気付いたら見知らぬ場所にいるなど、生活に支障を来すほどの場合は「解離性障害(Dissociative Disorders)」の可能性が考えられます。
解離性障害には大きく分けて、1)つらいトラウマ体験やその時期の記憶が思い出せない「解離性健忘(Dissociative Amnesia)」、2)自分を外から眺めているような体外離脱の感覚、あるいは夢でも見ているような非現実感が続く「離人感・現実感喪失(Depersonalization/Derealization Disorder)」、3)ひとりの中に別人格が複数存在する「解離性同一性障害(DID:Dissociative Identity Disorder)」があります。
1)の解離性健忘の一種には、気が付くと知らない場所にいたり、記憶が喪失して家や職場から突然いなくなったり、中には蒸発してしまうケースも。これは「解離性とん走(Dissociative Fugue)」と呼ばれ、記憶のない期間は数時間の場合もあれば、数十年に及ぶという人もいます。
なお、3)の解離性同一性障害の患者は、TVドラマや映画に登場する多重人格者のように明確な人格交代が観察される割合は5%にすぎません。大部分は周囲には気付かれずに、性格に問題のある人だと煙たがられたり、虚言癖や嘘つき呼ばわりされたりしています(注1)。解離状態で過食や自傷行為をして、気付いたら腕が血だらけという場合もあり、本人は自他共にひどい不信感に陥り、孤独感や絶望感から抑うつ、摂食障害、薬物依存なども併発しやすくなります。また、患者の多くは心的外傷後ストレス障害(PTSD)の基準も満たしています。
解離性障害になる人は、身体的、性的、または精神的虐待を幼少期に受け続けた人がほとんどで、その記憶自体を思い出せない人も大勢います。心理学者のマーティン・セリグマン博士が行った実験では、犬を檻に閉じ込めて電気ショックを繰り返し与えたところ、檻を開け放っても諦めて逃げなくなったそうです。この状態を「学習性無力感」と呼びますが、私たち人間も「逃げ場がなく安全な場所がない」状況に置かれると、戦ったり逃げたりすることを諦め、凍り付いたように動けなくなります。
「身体」が逃げられない状態に置かれた子どもは、最終的な防衛手段として「意識」を逃がします。脳は意識が麻痺した時の体験を言語化して記憶できないため、恐怖体験が未処理のまま残り、解離性障害を引き起こすのです。 
トラウマ研究を長年続けてきた精神科医のベッセル・ヴァン・デア・コーク氏は、著書『身体はトラウマを記録する』(注2)の中で、トラウマ記憶の多くは非言語領域に留まっているので、言葉中心の心理療法だけでは効果が薄いと指摘しています。したがって、体の感覚にフォーカスする訓練(ヨガ、武道、マインドフルネス)、非言語的なアプローチ(アートセラピー、プレイセラピー)、神経回路に働きかける療法(鍼、タッピング、EMDR:眼球運動による脱感作と再処理法、ニューロフィードバック:脳波訓練法)などとの併用が不可欠になります。
また、最新の脳科学研究によると、私たちの誰もが複数の心を持っており(注3)、トラウマによりそれが断片化されるそうです。このように切り離された自己の一部と対話を深め、調和や統合を図る「内的家族システム(IFS:Internal Family Systems)」療法も効果的です。いずれの方法も、身体感覚を手がかりにしながら自己対話を進めることで、「自分の主導権は自分が握っている」という主体感覚を取り戻すことが大切です。
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    Author

    長野弘子
    ​MA, MHP, LMHC


    NYと東京で出版事業に携わった後、東北大震災をきっかけにシアトルに移住。ノースウェスト大学院カウンセリング心理学卒業後、米大手メンタルヘルス機関で心理カウンセラー(LMHCA)として勤務。うつ病や不安障害、ADHD、自閉症等を抱える多くの子供やティーンエイジャーに対してセラピーを行っている。

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