www.soysource.net/2018/11/gaming-disorder/
本格的な冬の到来を感じるこの時期、外遊びの機会も減り、子どもがスクリーンを利用する時間が増えますね。特に、テレビゲームは飽きない仕かけが盛りだくさんで、やり始めて気が付いたらあっという間に数時間経っていたなんてことも。気晴らし程度ならストレス解消に効果的ですが、ゲームにのめり込み過ぎて家庭や学校生活がおろそかになり、注意をすると逆ギレされるような状態であれば、ゲーム障害の1歩手前かもしれません。 ゲーム障害とは、世界保健機関(WHO)が今年6月、新たに認定した精神障害で、ゲームをやりたいという衝動が抑えられず、学業や仕事よりもゲームを優先させ、日常生活に重大な支障をきたしているのが1年以上続いている状態です。患者数はゲーム利用者の2~3%と推測され、状況や年齢により1年未満でも診断可能。私の働くクリニックでも、子どもが深夜までゲームを続けて昼夜が逆転し、デバイスを取り上げると暴言を吐いて暴力的になり、困り果てた親が相談に来るケースが増えています。ピュー研究所の2008年の調査によると、アメリカの12~17歳におけるゲーム利用者は、男子が99%、女子が94%と大多数であり、どの家庭にとっても程度の差はあれ、子どものゲームのやり過ぎは懸念材料であると言えるでしょう。 さて、このゲーム障害について、ゲーム業界団体は、世界中で26億人がゲームを楽しんでおり、ゲームに依存性はないと反対意見を表明しています。確かに、ひと昔前は依存と言えば、アルコールやドラッグのような薬物による依存を指していました。しかし、最近ではギャンブル、ポルノ、買い物などの特定の行為によって得られる刺激にも同様の依存性があるとわかっています。ゲーム依存者の脳も、薬物依存者の脳と同じように、理性をつかさどる前頭前野よりも欲望や感情をつかさどる大脳辺縁系のほうが優勢になり、欲望をコントロールすることが困難です。 さらに、子どもの脳は前頭前野が未発達で、大人よりも衝動的で依存しやすい脳だと言えます。たとえば日本では、「コンプリートガチャ」と言われる課金を誘導するスマホゲームのシステムにより、未成年の高額課金トラブルが続出し、2012年に全面的に廃止されました。こうしたゲームは射幸心をあおるギャンブルに近いものであり、開発企業の責任は重いと言えます。 子どものゲーム依存が進行すると、不安や焦燥感、無気力状態、反抗的態度、強い怒り、暴言・暴力、学力の低下、社会活動の減少、睡眠障害、偏食、体調不良といった症状が見られます。「何度言ったらわかるの。なぜ止められないの」などと叱ったり諭したりしても、逆に相手を追い詰めることに。依存の背景には、ゲーム自体の依存性のほか、依存しやすい性格、家庭や学校生活でのストレス、挫折体験、または知的障害を伴わない発達障害などさまざまな要素が考えられます。 まずは、家の中を安心・安全な場所にして居場所を作り、本人の悩みを聞いてあげることです。そして、ゲーム障害の症状や依存の仕組み(意志の強さとは関係なく脳の報酬系が障害されて起こる)をきちんと説明し、本人に納得してもらいます。次に、ゲーム利用時間の記録を取って実態を把握し、「食事中はスマホを見ない」、「夜9時以降はゲームをしない」などのルールを話し合って決めます。映画や音楽鑑賞、スポーツなどゲームの代わりとなる楽しみを見つけることも大切です。 家庭での努力でどうしようもない場合は、専門機関への相談をおすすめします。フォールシティーにある「reSTART」は、全米初のインターネット依存患者向けの更生施設です。本人がかたくなに治療を受け付けない場合、まずは家族がセラピーを受けることも効果的です。いずれにせよ、最初の兆候を感じた時に、そのうち飽きるだろうと軽く考えずにすぐさま対策を講じることが大切です。そして、最初に決めた時間や頻度などのルールはしっかりと守るようにすることが必要でしょう。
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Author長野弘子 Archives
February 2024
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