www.soysource.net/2017/12/seasonal-affective-disorder/
毎日のように薄暗い雨の日が続くと気が滅入りますよね。実はこの時期に陥りやすいのが、特定の季節にだけうつ症状が出てくる「季節性情動障害」(SAD)です。「季節性うつ病」や 「ウィンター・ブルース」とも呼ばれ、気力が低下したり睡眠や食事のリズムが崩れたりするのが一般的な症状。もし、「気分 が落ち込む日が続く」、「朝起きられず、だるくて横になってしまう」、「炭水化物の食べ過ぎで体重が増えた」などの状態が続き、毎年のように繰り返すようならSADの疑いありです。 アメリカでは100人に6人がSADを経験するとされ、ハイティーンや女性に多く見られます。冬季のSADは日照時間の短い地域での発症率が高く、ニューハンプシャー州のSAD患者数はフロリダ州の7倍にも上ります。暗くなると分泌され る睡眠ホルモンのメラトニンが過剰になって倦怠感を感じ、その逆に光の刺激により分泌される「幸せホルモン」のセロトニンが減ってしまうためと推測されています。SADの治療法に は、1万ルクス以上の光を朝に30分から1時間ほど浴びるライト・セラピーが効果的。ビタミンDのサプリ摂取も一定の効果はありますが、気分の落ち込みがひどいようならかかりつけの医師に相談してみたほうがいいでしょう。 うつ病は、「真面目な人がなる病気」とよく聞くように、責任感が人一倍強くて自他共に厳しい完璧主義タイプの人がなりやすいと言われています。うつ病の認知療法の創始者とし て知られるアーロン・ベック精神科医は、うつ病になりやすい 人は「自責の念が強く、悪いことを拡大解釈して全てが悪いと考える」悲観的傾向を持つとしています。陽気で楽観的なアメリカ人のイメージとは裏腹に、21世紀におけるアメリカの ティーンも、学業以外にドラッグや性的暴行、DV、SNSによるいじめなどの強いストレスにさらされており、うつ病の発症率も増加。米保健福祉省(HHS)の統計によると、2015年には12 〜17歳のティーンの300万人以上がうつ病と診断され、発症率は2005年の8.7%から増えて11.5%に上ります。慢性のうつ病を患っているティーンは約200万人おり、悪化すると自殺のリスクも出てきます。 自殺念慮のあるティーンのほとんどには、「私なんていないほうがいい」など自己否定的な発言をする、学校を休みがちになる、身だしなみを気にしなくなる、自傷・他傷行為に走るほか、頭痛や腹痛、不眠・過眠、拒食・過食といった体の不調を訴えるなどの特徴が見られます。 アメリカでも若者の自殺は深刻で、今年6月に発表されたユニセフの報告書「Building the Future」によると、15〜19歳の自殺率はアメリカでは10万人中7.6人で、なんと7.4人の日本よりも高いという報告が出されています。24歳まで年齢を拡大すると日本のほうが自殺率は高いのですが、ティーンの場合 は衝動的な行動に出やすいので、異変を感じ取ったらすぐに病院やカウンセリングに連れていくか自殺防止ホットライン(☎ 1-800-273-8255)に電話することをおすすめします。家庭では、薬品やナイフなどの危険物を手の届かない所にしまい、そばで見守りながら「あなたが大好きだから生きて欲しい」と伝えていくことが大切です。治療法としてはセラピー(主に認知行動療法)と抗うつ薬の併用が効果的と言われていますが、25歳以下は抗うつ薬で自殺や攻撃性のリスクが2倍になるという調査結果も出ていますので慎重に判断してください。重いテーマになってしまいましたが、早めの徴候を見逃さずに助けを求めることで多くの自殺を防ぐことができます。 最近では自殺やドラッグ、性的暴行を真正面から描いた Netflixドラマ「13の理由」(原題:13 Reasons Why)の悪影響も懸念されています。今年の3月に放映開始されたこの番組、主人公の女の子が彼女を追い詰めた人々を13の音声テープに 残して自殺するという筋書きで、全米スクール・サイコロジスト協会や臨床発達心理学学会から自殺を誘発する可能性があると批判されています。実際、番組公開後はネットでの自殺関連の検索件数が放映前よりも19%高かったという研究結果が出ています。 次回は、最近目覚ましく研究が進んでいる腸内環境と、自閉 症を始めとする心の世界との知られざる関係について考えて みたいと思います。
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Author長野弘子 Archives
February 2024
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