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令和元年もあと少しで終わりを迎えようとしています。日本の1年を振り返ってみると、51歳の引きこもり男性による川崎市登戸通り魔事件、東京都練馬区の元官僚による44歳の引きこもりの息子殺害など、引きこもりにまつわる事件が平成の負の遺産として浮き彫りにされた年でした。引きこもりとは、近所の店などに行く以外はほとんど自室や家から出ない状態が6カ月以上続いている場合と定義され、90年代後半から増加し続け、日本全国で100万人以上いると推測されています。引きこもりは若者だけの問題ではなく、むしろその高齢化が危惧され、今年3月には中高年層の引きこもりを対象とした初の調査結果が発表されました。それによると、40歳以上の引きこもりは61万人以上、7割以上が男性で、7年以上引きこもっている人は半数に上るという実態が明らかに。70、80代の高齢の親が40、50代の子どもの面倒を見る「7040」「8050」問題は、令和に託された重い課題だと言えるでしょう。 引きこもりは、就職氷河期世代やインターネットの影響という社会的な側面が強調されがちですが、その理解には心理的な側面も含めた多角的な視点が必要です。2003年には厚生労働省による最初の対応ガイドラインが発表され、その解決には専門的な心のケアが必要であるとの認識が広まりました。精神科医の齊藤万比古(さいとうかずひこ)氏によると、引きこもりの人々はほぼ100%何らかの精神障害を患っている可能性があり、山梨県立精神保健福祉センターの調査でも、引きこもりの患者の約30%に発達障害、24%に不安障害、18%にパーソナリティー障害、14%にうつ病、8%に統合失調症の症状が見られました。 引きこもりの3人に1人は発達障害の可能性があるという結果は重大です。特に、ADHD(注意欠如多動性障害)や高機能自閉症など知的障害を伴わない場合、家族や本人も気付かずに性格的なものとして見過ごしているケースがあります。発達障害を持つ人は、自己抑制機能が低くストレスに弱いので、恐怖や不安感をより強く感じ、うつ病や不安障害、依存症などの二次障害を併発しやすくなります。なんとか高校や大学まで行ったとしても、就職して社会人になってから対人関係で問題を起こすなど、仕事が続かず引きこもりになる人も。発達障害との認識がないまま、親が世間体を気にして子どもを責めるようなことがあると、子どもはさらに追い詰められて孤立し、最悪の場合は暴力沙汰にまで発展しかねません。 それでは、どういった対応が必要になるのでしょうか。まずは、引きこもっている状態は心の問題であると認識して早急に専門機関に相談することです。本人が頑なに支援を拒んでいる場合、家族がセラピーを受けることでも環境や状況が改善します。ありのままの自分が受容されたと感じて安心感を得ると、何かをしたいという意欲が芽生えてくるので、当事者グループや地域支援センターなどから少しずつ社会参加を進めていきます。そして、最終的には本人と家族の納得する形で解決の糸口を探ります。たとえば、不登校の場合は学校に戻るだけが解決ではなく、ホームスクールや高卒認定試験を取得する、家族と一緒に食事をして対話をするなら同居を認める、在宅ワークをするなど、解決の形は家族によってさまざまです。 視点や解釈を変えることで、問題だと思っていたものが長所に変わる場合もあります。たとえば、今年9月に国連で地球温暖化対策を訴える演説を行い、注目を浴びた16歳の少女、グレタ・トゥーンベリさんは、自閉症であることを公言し、自閉症は障害ではなく「スーパーパワー」だと語っています。グレタさんは、強迫性障害や場面緘黙症を併発しながらも、強いこだわりや二極思考といった自閉症的な特徴を生かして世界を動かしたのです。 「一人ひとりが、それぞれの花を大きく咲かせることができる」ようにという意味が込められた令和の時代。どんな人も独自のスーパーパワーを持つという視点に立ち、いろんな生き方を受け入れる人が増え、成熟した社会へと成長できるといいですね。
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Author長野弘子 Archives
February 2024
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