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もし、自分の子どもが、体を触られたり、嫌なことをされたりしそうになった時、少しでも嫌だと思ったら毅然とした態度で「やめて」と言えるでしょうか。性的同意に関する議論は、ハリウッドの大物プロデューサーによる性的暴行に端を発した「#MeToo運動」の効果もあって世界中に広がりました。性的同意だけではなく自分の意思に反することに対して、相手にきちんと断ることのできる心の強さは、いじめの被害者にならないために、さらには大人になってからもパワハラやセクハラの被害者にならないためにとても重要です。今回は、子どもが自分の意思を堂々と伝えられるよう、またその逆に、自分の欲求を強要する加害者の側にならないためにどうすればいいかを考えてみましょう。 もともと不安が強い子やハイリー・センシティブ・パーソン(HSP)とも言われる繊細な子は、自分の意見を人前で言うことが苦手で、人間関係においても受け身で相手を拒絶することがなかなかできません。こうした性格は、生まれ持った気質、生育環境、文化的背景などが合わさって形成されます。子どもの性格を知ることからまずは始めましょう。性格診断で幅広く使われているのが、「ビッグファイブ性格特性」です。これは、5つの性質から性格を分析するもので、具体的には、 1)開放性(Openness to experience) 2)誠実性(Conscientiousness) 3)外向性(Extraversion) 4)協調性(Agreeableness) 5)繊細性(Neuroticism) の5つの因子から構成されます。オンライン(https://openpsychometrics.org/tests/IPIP-BFFM/)でも診断できます。 開放性は、好奇心の強さや芸術的な感性、新しいアイデアや物事への柔軟性を示し、開放性が高いと好奇心が旺盛でクリエイティブ、低いと用心深く保守的という傾向があります。誠実性は、自分を律して着実に目標達成する責任感の強さを示し、誠実性が高い人は仕事や勉強熱心で他者からの信頼もあつく、低い人は直感や感情に従って突発的に行動するタイプです。外向性は社交性や積極性を示し、高い人は外向的で他者との関わりを積極的に好み、低い人は内向的で内気なタイプ。協調性は他者への配慮を示し、高い人は思いやりがあって友好的、低い人は他者に対して批判的で競争心が強い傾向があります。最後の繊細性は、ストレス耐性と情緒の安定性を示し、高い人は緊張や不安、怒りを感じやすく、低い人は情緒が安定しておりネガティブな感情をあまり感じません。 いじめを受ける子どもの多くは、外向性のスコアが低く繊細性のスコアが高い傾向にあります。このような内気で繊細な子は、自分の考えや感情を毅然とした態度で相手に伝える自己表現のスキルを身に付ける必要があります。まずは、親がアドバイスを与える前に、子どもが自分で考え、自分で決めるという機会を増やしてあげること。自分で決めたらその責任は自分で負う必要があるので、不安が強い子は親に頼りがち。「自分で決めなさい」と突き放すと不安が強まるので、命の危険や犯罪行為に関するもの以外は、少しでも意思表示ができたら共感してほめてあげてください。親がダメ出しをし過ぎると、子どもは自分の考えに自信が持てず、自分の意思を相手に伝えることが苦手になります。その結果、相手を避けたり逆に依存したり、コントロールされたりと人間関係で苦労する可能性が高くなります。嫌な気持ちを聞いてあげたあとで、「どうなったらいいの?」と希望を聞き、そのために子ども自身に何ができるかを考えてもらいます。多くの場合、相手に意思表示をする必要性も出てくるので、自己表現スキルの練習にもなります。 その逆に、いじめる側の性格的な特徴としては、外向性のスコアが高く協調性のスコアが低い傾向にあります。自我が強く相手の気持ちが理解しにくい子に対しては「相手はどんな気持ちだったと思う?」など、共感性を高める質問を増やしましょう。また、断られることと自分の価値とは何の関係もないことを教え、相手の気持ちを尊重することの大切さを繰り返し伝えましょう。 子どもたちが大きくなった時、互いの意思を尊重して認め合うような生きやすい社会が実現できるといいですね。
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Author長野弘子 Archives
February 2024
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